「じゃあ、神無月はそこの空いてる席な」


「はい」



 既婚者の先生は転校生の美少女具合にも、今ここで進んでいるクラスの惨状にも全く動じていなかった。


 血だまりの彼はその鼻血で血文字のラブレターを書き始めたり、早速窓に向かって転校生への愛を叫ぶ人も出てきたり、まさに軽い学級崩壊なのに完全スルーである。



「……じ、実は先生朝から腹の調子が悪くてな。す、少しトイレに行ってくる。予鈴が鳴ったら先生は戻ってこないと思ってくれ」



 全然大丈夫じゃありませんやん、センセー。


 ピューと先生が外へ駆けだして、私達の目線は未だ転校生に留められたまま。彼女が指定された席へ移動するまで、まばたきひとつせず追いかけ続ける。


 そう、彼女が立ち止まるのを待って――



「よろしくね」



 目が合った。


 ……は?


 いやいや、え? なに?


 いや、は?


 なんで私美少女とこんなに近いの? なんで笑いかけられてるの? え、ていうかもしかして今話しかけられた?


 え、なに、なんて返せばいいの? ここはもう欲望のままに一発やらせてくださいとか言えばいいの? いやそんなん絶対引かれるわ。いやでもそんな表情も見たい~~~。



「な、名前聞いてもいいかな?」



 座った~~~~~~!! 私の隣の席に座った~~~~~~!!