「優太のこと、好きなんだ」
広菜は優しい目をしていた。
そんな素振りはまるで見せなくて。恋愛とは無関係だと思っていた広菜が・・・優太を、好き?
信じられなかった。
だけど、広菜の真っ直ぐな目がそれが真実だということを告げていた。
目が合う。それでも広菜は話し続ける。
「だから気になってね。
聞いたんだ。好きな人いるの?って」
広菜が切なそうに微笑む。
その先は、聞きたくない。
「いるんだって。好きな人」
重い空気が流れる。
自分の家なのに茉衣は居心地の悪さを感じていた。
そこまで言い終えると広菜は無理矢理のような笑顔を作った。
その目は笑ってはいなかった。
「馬鹿だよね。聞かなきゃよかった!
絶対自分じゃないって分かってたのに。
変な期待なんかして。
だからさ。もし過去に戻れたらこんなこと二度と聞かないのにな、って思うんだよね」
聞きたくなかった。
広菜が優太を好きなことも。
優太に好きな人がいることも。
全部、全部。
もしも過去に戻れるならこんな話、聞きたくない。
「まぁでも私は優太のこと諦めないけどね!」
好きだから。広菜が自信たっぷりに言う。
その目はさっきまでの切なさを感じさせないくらい真っ直ぐで、強くて。
負けそうだった。
広菜が優太を思う気持ちに。
だから茉衣は言えなかった。
・・・優太が好きだ、と。
