二秒の世界で僕は死ぬ

体育館に向かった。
その途中で先輩を見かけた。
いろんな人に囲まれてた。
幸せな人なんだなと、思った。
俺も、あんな人に絡んでもらえて幸せもんだなと、思った。
でも俺は、先輩を囲むような人じゃない。
“当たり前”を“当たり前”と思わないように生きるんだ。

「山木ー、ちょっと手伝ってくれ」
体育館と逆方向から担任に呼ばれた。
先輩の視線を感じた気がした。
「了解っす」
「お前なー、敬語がチャラいぞー」
笑いながら言われた。
うちの学校は緩いから、(あと多分俺の家庭事情を察して)先生との距離が結構近かったりする。
俺はこの担任が好きだ。

「で、手伝うことってなんすか?」
「悪いな!このプリントの閉じ込め作業を手伝って欲しいんだ」
「え、これ今じゃなくても…」
「まあまあいいからとりあえず座れって」
これはほかに何か用があるな。
めんどくせぇもんに捕まっちまった。

「お前、『お節介な先輩』と仲良かったろ。」
「いえ、仲良くはありません。」
「なんだお前その言い草は」
心底驚いたような顔をしていた。
「まじっすよ。よくしてもらってるだけです。
先輩とは、住む次元が違うんすよ」
担任が、片眉をあげた。
「なぁに言ってんだお前は!住む次元が違うってみんな一緒だろー?」
「あーそういうことじゃなくてー」
弁解しようとした時に、これまで笑顔だった担任の顔が真剣な顔になった。
「お前、『お節介な先輩』とちゃんと話したのか?」
「え…?」
「今までたくさん世話になったろ。一言でいいから礼を言ってきなさい。親御さんとの約束も、実はちゃんと守ってるんだろ?」
すべてを見透かされていた、のかもしれない。
担任が、先生の顔をするのはこれが初めてだった。