危ナイ隣人

考えるよりも先に立ち上がって、廊下に飛び出していた。


真っ暗な廊下に、少しだけ開いた扉の隙間から光が差し込んで、シルエットが現れる。



「ナオくん!」



暗がりの中、無我夢中で駆け寄る。

自分が笑ってるのか泣いてるのかなんて、わかんなかった。



「茜? どうした……って、うわっ」



手を伸ばして、ぬくもりに触れて、後先なんて考えずにフローリングを蹴った。

ぬくもりはそれを予想していなかったらしく、ぐらりとよろけてしまったけれど、それでも倒れないところがさすがだと思った。



「え、ちょ……突然すぎて頭ついていかねえんだけど……なんかあったのか?」



なんかあったのか、じゃないよ。

ヒトゴトみたいに呑気に言ってさ、私が、どんな気持ちで……。



「ぶじでよかった……っ」



絞り出した声は掠れていて、喉がきゅうってつねられたみたいに痛かったから、これ以上言葉を発したら溢れそうになるものを堪えきれないような気がした。


私に捕らえられたぬくもりは何かを察したように息を飲んで、腕を私から解放させる。

その手を私の頭の上に置いて、そこに額を当てたことは、ずしりと重さが加わったからわかった。



「ニュースにでも映ってた?」


「……ん」


「そっか。あーあ、バレちまったなぁ」