危ナイ隣人

……思い出したら悔しくなってきた。


すました彼の顔が思い浮かんで、負けず嫌いの種火がつきそうになった。

このまま着火しちゃわないよう、慌てて顔を上げて気分を変える。



「真帆は? 何歳までがいい?」



順を追って唐揚げを頬張っている真帆に話を渡すと、真帆はにこやかに笑う。



「40歳以上。仲●トオル似ならなおよし」



ブレないね! の声は、くるみのものとぴったり重なった。


真帆のイケオジ好きはもちろん知ってたけど、こんなにもいい笑顔で言うなんて、予想以上のイケオジ好きなのかもしれない。



毎日一緒にいても知らないところが出てくるんだもん、ほんとに2人はおもしろいなぁ。

この瞬間は嫌なことも忘れられる、私にとって大好きな2人なんだ。





──だけど、嫌なことから逃れられるわけじゃない。


学校が終わってマンションに帰って、いつもなら真っ直ぐにエレベーターに向かう足を、今日は管理人室に向けた。


ガラス戸を叩くと、中にいる大家さんがすぐに気付いてくれる。



「茜ちゃん。おかえり、今学校帰りかい?」


「そうです」



いつもの私だったら「疲れました」と話を次に繋げるところだけど、今日の私にそんな余裕はない。