危ナイ隣人

「ナオくんちって女っ気ないよねぇ」



パンをかじりながら何となく言うと、同じくパンをかじっていたナオくんが視線だけをこちらに向けた。


聞いちゃいけない雰囲気ではなさそうだから、そのまま話を続ける。



「カワイイ小物ひとつないし、脱いだ服がそのままにしてあったりするし。なんていうか、THE・男の部屋! ってカンジ」


「お? 少なくとも褒めてねぇな?」



たぶん二杯目のコーヒーを飲みながら、ナオくんがめんどくさそうに答える。



「言っとくけど俺、すっげぇモテるぞ」


「わぁ、ほんとに自分で言ったね」


「だって事実だし」



ここで照れとかを一切見せない辺りが凄いわ。

ま、側から見たら私もいい勝負なのかもだけど。


でもこの発言がほんとだってのは事実だろうな。

ビジュアルは悪くないもん。ビジュアルは。



「女を家に連れ込むシュミねーんだよ、俺。パーソナルスペースにまで入り込まれたくない」


「……へぇ」



じゃあ、私は来てよかったのかな。

仕方ない状況だったとはいえ、嫌だったんじゃ……。


少し不安になって視線を落とすと、また「バカ」なんて言葉が飛んでくる。



「家に人を入れたくないわけじゃねぇよ。ただ、“自分のオンナ”として家に呼びたいと思うようなやつがいないだけだ」