危ナイ隣人

「アホ、誰がクズだ」



いや、もう自分で言っちゃってんじゃん。せっかく私がオブラートに包んで言ったってのに。

一応、自覚はしてるのね。



「つーか、片付けもういいぞ。パン焼けてるし」


「あ、うん。わかった」



私の手から馬券を抜き取って、代わりに湿らせた布巾を渡してくれる。



「コーヒー飲むか?」


「ミルクある?」


「ない」


「じゃあいいや」



テーブルの上を拭きながら返すと、背後で「ガキだなぁ」なんて呟きが聞こえてくる。


あーやだやだ、ガキ餓鬼ってコドモ扱いばっかりして。

24だったら、そんな変わんないじゃん。7つしか違わないなら、お兄ちゃんの方が年上だし!



「昼休みにでも、大家に電話しとけよ。床のこと、聞いといた方がいいだろーし」


「そうだね。何もなかったらいいんだけど」



トーストがのったお皿を受け取って、綺麗になったテーブルの上に置く。


ナオくんは私の正面にお皿を置いて、私にマグカップを差し出してきた。



「ただの水だけど。ないよりマシだろ」


「ありがと」



受け取ったマグは、白い字で小さく英語がプリントされた黒いやつ。

シンプルだし、おしゃれだとは思うんだけど。