危ナイ隣人

そういえばお父さん、「ロマンを買うから、賭けるのは少額でいいんだ」なんて意味不明なことを言ってたっけ。


その時は、馬券そのものを見ることはなかったけど……へぇ、コレがそうなんだ。



「ちなみにいくら賭けて──」



ハズレたという手元の馬券に視線を移すと、右側に記された『円』の文字が目に飛び込んできた。


その前にある数字は……



「2万!?」



まだ寝ぼけてるんじゃないかと疑ってしまうような数字に、思わず声が上擦ってしまった。


いちじゅうひゃくせんまん……何回数えても、2のあとには0が4つある。



「こんな大金を、ギャンブルに……?」


「たまたまだっつの。絶対的本命がいて、少額賭けるだけじゃ当たっても全然戻ってこねーから、そんだけぶっ込んだんだ」


「でもこれ、ハズレたんでしょ?」


「あぁ、最後の直線で見事に失速しやがってな。普段はこんだけ賭けてねえよ。せいぜい、1レースにつき5千円くらいだ」



いやいや、そんなサラッと言われましても。高校生の私からすれば、5千円もかなりの大金ですから!



「なんか……アレだね。ナオくんって、残念な大人を絵に描いたような人だね……」