「俺パン焼くけど、お前も食う?」


「え、私までいいの?」


「いいのって……朝飯は1日の資本だろ。食わずに学校とか行くなよ」



リビングの扉を開けて右奥にあるキッチンから顔を覗かせて、ナオくんが言う。


そう言えば異性の家に泊まったのって、初めてかもしんない。

この人は異性を泊めたなんて思ってないんだろーけど。



「テキトー人間だと思ってたけど、意外としっかりしてんだね」


「意外とってなんだよ、失礼な」


「失礼とか、ナオくんにだけは言われたくないです」



ソファーから体を起こして、体を伸ばす。


眩しかったのは、ベランダから差し込む太陽の光か。


朝日に照らされた部屋は……うん、やっぱり目を背けたくなるほど汚い。

我ながら、よくこんな部屋で寝れたなぁ。



「ねぇナオくん。部屋がこんなに汚いのには、何か理由でもあるの?」


「べつに。ただ片付けが嫌いなだけ」


「なんだ。じゃあ、今から片付けても問題ないよね?」


「……は?」



キッチンを覗き込むと、ナオくんはコーヒーを入れているところだった。


芳ばしい香りが狭い空間に充満していて、何だかちょっぴり大人の空間にいるみたい。