危ナイ隣人

「ずっと勧められてたんだ。でも、この仕事を贖罪の手段としていた俺には、上を目指す理由はなかった。

今の職場でも十分人命救助には携われるし、このままでいいと思ってた」


「……うん」



ふと、随分前に盗み聞いた京香さんの言葉を思い出した。


──『これだけの人を救っても、あんたはまだ自分を許さないのね』

この言葉の意味が、今ならわかる。



「俺は俺を許してはいないし、これからも許すことはないと思う。でも、そんな俺を受け入れてくれた茜や、周りの人達に報いたいって思うようになった」


「うん」


「自分と向き合って、初めて未来のことを考えた時に、思ったんだ。

この仕事を通じて、もっと多くの人を救いたいって。罪滅ぼしじゃなく、はっきりと俺の意志でそう思った」



ナオくんの目に宿る光は揺るぎなかった。


柔らかい表情の中に確かにある、決意。そこには、何の迷いもない。



「そう思わせてくれたのは、他でもないお前だよ」


「……え?」


「あの時、茜が体当たりでぶつかって、俺を前に向かせてくれてなかったら……俺は一生同じ場所で、下を向いて生きてたんだと思う」



苦しみながら人の命を救い続ける。

そんな未来は、ナオくんになくていい。


ナオくんを待つのは、輝かしい未来だけで。



「こんなこと言うなんてクサいって、自分でもわかってるけどさ」


「……クサいってツッコんでもいいの?」


「なんでやねん」



ムードぶち壊しの私の発言に、瞬時にナオくんからツッコミが入る。