危ナイ隣人

ほんと、どこまでも優しい人だ。



「……あっ」



視線の先、消防署の扉が動いた。


黒いダウンを着た体格のいい男の人が中から出てくる。



はっきり思い出せないけどどこかで見たことのあるその人の姿に、私は弾かれるように腰を上げた。


あまりに勢いがよかったからか……少し離れているにも関わらず、その人の視線が私を捉える。



「…………」


「…………」



ばちっと視線が絡んだものの、たぶんお互いに記憶を引っかくものの正体が掴めずに、その場で氷のように固まる。……って、そんなことしてる場合じゃないってば!


氷を瞬時に溶かし、その……少し遊んでそうな男の人の元へと駆けていく。



「あ、あの」


「あっ、思い出した。真木の彼女だ」


「へ?」



私が話をする前に、その人は私の正体を言い当てた。


真木の彼女……って、なんでそんなこと知って……!

……って思ったけど、本郷さんの口から署内に広まったって、付き合い初めに言ってたっけ。



「1回会ったことあるよね。真木が酔い潰れた時、真木の家の前で」


「……あ!」



私も思い出した。


弱いくせにお酒飲んで潰れたナオくんが家の鍵を失くした時、本郷さんと一緒にいた先輩のうちの1人だ。そっかそっか、あの時会ってたから見覚えあったんだ。



「真木待ち?」


「あ、はい。ナオくん、もう出てきますか」


「さっき着替えてたから、もうすぐ出てくると思うよ。……って、いいなぁあいつ。こんなカワイイ彼女が迎えに来てくれてさぁ」