危ナイ隣人

もう逃げない。


これからの未来を生きていくのに、隣にいるのはあなたがいい。





深く眠れないまま朝を迎え、朝一番に家を飛び出した。


早歩きで慣れない道を進み、新しいとは言えない2階建ての建物に辿り着く。



スマホの画面を確認すると、8時を少し過ぎた頃。

思ったよりも早く着いちゃったな。


突っ立っているのもなんなので、道路を挟んだ向かい側にある生垣に腰を下ろした。



「早く出てこないかな」



そう独り言ちて、ナオくんがいるであろう消防署に再び視線を向けた。今月のシフトは、予め教えてもらってる。



ここに来るのは、2回目だ。


あれは、去年の夏前だったっけ。


まだナオくんとのお付き合いが始まる前。私を避け続けていたナオくんを追いかけて来た時以来だ。



「今と真逆だ……」



連絡を絶って、顔を合わせることを避けて。


そのつらさを、私は知ってるのに。……それはもう、痛いほどに。



昨日の夜、やっと開いたナオくんとのLI●Eのトーク画面に、言い訳は一つもなかった。



【異動のこと、黙っててごめん】


【家には無事に着いたか? 無事かどうかだけでも連絡くれ】


【茜が落ち着いてからでいいから、話をする機会をくれないか】



他にも何件か来ていたメッセージ。


そのどれもが、私を案じて送ってくれたものだった。



ずるいよね、ナオくんてば。


子どもみたいに拗ねて逃げるなって怒ってくれた方が、まだ楽だったのにさ。