危ナイ隣人

「こんなレアな御山さん見られるなら、俺も地元離れたくないかも」


「へ……!?」



塚田くんまで何を……!


いよいよ居た堪れなくなった時、真帆が小さく笑って私の目を真っ直ぐに捉えた。



「中学の頃からわりと大人びてた茜のこういう一面を、まさか卒業間近になって見られるなんてねー。

茜のことをよく知らない子達は、クールでドライだとか言ってたのに」


「真帆」


「茜が変化を怖いと思うのは、これまでに色んなことを経験してきちゃったからだと思うけど」



言葉を失う私の手を、真帆が両手で掬い上げた。


その後ろで、みんなが穏やかに微笑んでいる。



「大丈夫だよ。今までみたいにすぐ傍にいなくたって、私達は変わらず茜の味方!」



言葉を後押しするように、両手に力が込められた。


……まずい。



「泣いちゃいそうになるじゃんか」


「そこで素直に涙流したりしないこと、知ってるぞ」


「……バレたか」



ふざけて、本当に滲みそうになっていた涙を慌てて引っ込める。


泣いても許してくれるんだろうけど、泣きたくなかった。



上着を着たみんなを、玄関先まで送る。


エントランスまで行くよって言ったんだけど、全員から遠慮された。寒いからって。


寒くても、下までお見送りしたかったんだけどな。



「じゃ、またね」


「うん、次は登校日だね」


「いよいよ卒業式のリハーサルかー」



玄関の狭い空間が、ごちゃごちゃ賑わう。


こんなに人が来ることも滅多にないから、なんだか不思議なくらい音が反響してる。