危ナイ隣人

「お疲れ様。合格、おめでとう」



沸いたお湯を、ティーパックの入ったマグカップに注いでいた時。

心地よい音色で、塚田くんの声が響いた。


瞬間、少しだけ、胸がきゅって締め付けられる。



「ありがとう。塚田くんも、お疲れ様。おめでとう」


「うん、ありがとう」



コポコポと音を立てて、マグカップから湯気が上がる。


燻る湯気を注視しながら、言葉を探しあぐねた。



少しの間の後、口火を切ったのは塚田くんのほうだった。



「やっぱり俺、M大に行こうかなと思ってる」



それはどこかで予想していた、塚田くんの下した判断。


法学部を中心に受験していた塚田くんだったけど、第一志望のR大の法学部には落ちてしまった。

同時に受けたR大の他の学部は合格したって聞いたけど……同じく合格していた、M大の法学部に進むことを決めたみたいだ。


法学部に合格したら、R大の結果がどうであろうと、後期の試験は受けないって前に言ってた。


色々な道を勝ち取った中で、一貫して法学部って選択を貫いた塚田くんは、凄いと思う。



同じ場所を目指していたけれど、春、私達が立つ場所は違うんだね。



「寂しくなっちゃうね。一人暮らしすることになるでしょ?」


「そうなると思う。さすがに実家から通うのはキツいから」



うんうん、そうだよね。

塚田くんのおうちからだと、2時間半以上かかっちゃうもんね。



「でもまぁ、すぐに帰れる距離ではあるから。戻ってきたら、また遊んでよ」


「もちろん。大学生になっても、こうして集まれたらいいよね」