「で、逃げ続けてダメージ受けてんの?」


「うっ」



3月1日。

話を聞いてもらった後、案の定痛いところを容赦なく衝かれて、私は机に伏せた。



公共機関を使ってどうにか帰ってきてから数日……どうしたらいいかわからなくなった私は、ナオくんを避け続けている。



「お隣さんでしょ? 鉢合わせたり、訪ねてきたりしてないの?」



私が出したミルクティーを啜ってから、小首を傾げてくるみが聞いてくる。



「……ナオくんの非番がいつか知ってるから、いない日を見計らって外出してる。インターホン押されるけど……それは居留守」



バツの悪さを感じつつ言うと、真帆とくるみは身を寄せ合って、「うわぁ」とでも言いたげな表情を浮かべている。

自己嫌悪を抱いているからこそ、グサッときます、そのカオ。



「真木さん可哀想……」


「明らかにいるのに居留守とか、凹むだろうねぇ」


「もうやめて、私のHPゼロだから」



容赦ないな、この2人!

ナオくんじゃなくて、私の友達でしょ!? ……と思いつつ、2人が間違ってないこともわかってる。


背を向けてたって解決することじゃない。

むしろ早々に話し合わなきゃいけないことだって、頭ではわかってるのに……心が、どうしても逃げてしまう。


京香さんから届いているLI●Eも、怖くて開けてないし……。



「会ってないってことは、真木さん、今日のことも知らないの?」


「ううん、それは決まった時に伝えてあったから」



──ピーンポーン……


会話の流れを見計らったかのように、部屋の中にインターホンの音が鳴り響く。