追いつかれないよう、必死に走った。

言い訳も弁明も、何も聞きたくなかった。


頭の中はパニックで、どうしようもなくて、苦しい。息継ぎも上手くできない。

ただ、目の前には深淵が転がっている。



マンションのお隣に住む、大好きな人。

痛みを抱えて今も生きる、弱くて強い人。

少しだけぶっきらぼうに、私のことを大切にしてくれる人。


ナオくんがくれる、かけがえのない時間がなくなるなんて……そんなの、絶対やだ……!