危ナイ隣人

「……なにニヤけてんだ」



眉間に皺を寄せたナオくんの視線が、私の背後に投げられた。

振り返ると、確かにそこには口元を緩ませた京香さんが。



「だって、息ぴったりなんだもん。どこの夫婦かと」


「ふっ……!?」



夫婦!?

予想の外から飛んできた言葉は、びっくりするようなパワーワード。


京香さん、何を……!



「揶揄うなよ。圭太の前でそんなこと言ったら殺されるだろ、俺が」


「あはは、それもそうね。きっと今頃怒ってるわ」



狼狽える私をよそに、ナオくんは冷静だった。


ナオくんも京香さんも、何でもなかったかのようにお墓に向かい合い、掃除に取り掛かってしまう。



……テンパったのは私だけですか。そーですか。

なんだよぅ。少しくらい私みたいに動揺したっていいのに、大人の対応しちゃってさ。


たった一言にこんなにも困惑しちゃった私は、やっぱりまだコドモなんだよなぁ……。



「茜? 何してんだ、寒いからってサボりはダメだぞ」


「サボりじゃないもん! 今からやるからっ」



今に見てろ、ナオくん!

高校を卒業して大学生になったら、ナオくんが動揺しちゃうくらい魅力的な女性になってやるんだから……!





掃除を終えて、買ってきた花を花立てに挿す。


ナオくんが持ってきてくれたライターで蝋燭に火を灯し、束になった線香にも移した。



「…………」


「…………」



誰からともなくお墓に向かい、手を合わせて目を閉じた。