危ナイ隣人

「なんでって……フリとは言え普通にするより、あっちのほうがハードル低いでしょ」



普通にするより。ハードル。

結果論として……確かにそうかもしれない。


塚田くんはアドリブを挟んだ後、私の腕を引いて……私の唇を、自分のおでこに寄せさせた。

触れたのはウィッグで、これもまたフリだったんだけど。


結果として、キスシーンは口づけではなく、額へのキスになった。



塚田くんの斜め後ろを歩きながら、細い通路を抜けていく。

私達の後に発表を控えているクラスの子達が既にスタンバイしていて、ごった返しているから歩きにくい。



「でも、だったら……先に言ってくれてたらよかったのに」


「みんなにバレて阻止されたくなかったから、黙ってた。実際、誰も知らなかったでしょ?」


「それは、そうだけど……」



でも、当事者の私にくらい教えててくれてもよかったのに。

塚田くんが床に座り込んだ瞬間、どうすればいいのかわかんなくなったのに。


しかも……。



「さっき言ってたことって……?」



少し切な気に耳に届いた声。

あれは一体……?



気になって塚田くんを見上げて問いかけてみても、本人は素知らぬふり。



「終わったから、もう何のことか忘れたよ」


「えっ! 何それ!」



食い下がろうとしても、取りつかせる素振りを見せない塚田くん。


うーん……引き下がるしかないのか。くそぅ。



そうこうしているうちに、裏口から講堂を出る。