危ナイ隣人

「御山さ……」


「ロ……ローラだ……っ!」



飛び出した勢いのままに、私の目の前で気まずそうな、照れくさそうな表情を浮かべていた塚田くん。


そんな彼の言葉を遮ったのは、思わず滾ってしまった私の声だった。

知らず知らずのうちに両手で口元を抑えていたのだから、どうしようもない。



「……御山さん。素でローラ呼びするのやめてよ」


「ごめんごめん。想像以上にイメージ通りで」



周りの気配も、私に同調してくれている。

骨格はもちろん男性なんだけど、それを加味しても綺麗なんだもん!



「こりゃ、また塚田くんのファン増えますなー」


「クオリティ高すぎて、女としての自信失くすわ」


「中身が塚田って知らなかったら、普通に惚れそうなんだけど」



周りからの賞賛に比例するように、ロー……塚田くんの表情はどんどん渋くなっていく。


ほんと、こういう話題になるの苦手なんだなぁ。

芸能人には向いてないから、演技は上達した(当社比)けどマカデミー賞はないな。残念。



「メイクもしっかりやってるんだね」


「……メイク班がいつの間にか発足してた」


「あはは。私もメイク班にやってもらったよ」



と言っても、騎士役の私は塚田くんとほどではないけども。


対する塚田くんは、端正な顔立ちが生えるような薄さで、それでも舞台に生えるようフルメイク。


衣装を着替える時に、同時に化粧直しが行われることを塚田くんはまだ知らない。