危ナイ隣人

みんなの頑張りの末に話題になったのなら、すごく嬉しい。



劇とかメインキャストとか、キスシーンとか。

乗り気じゃなかった材料は沢山あったけど、ここまで来ちゃったんだ。


もう、文句なんて言っていられない。


みんなの頑張りを無駄にしないためにも、絶対に本番を成功させないと……!



「ローラも完成しました〜!」



もう一つ設けられた更衣スペースから、達成感を滲ませた高い声が聞こえて来る。


瞬間、周りの空気が、期待と少しの緊張感に包まれた。



主人公、ローラ。

キャスティングは塚田くん。


劇中に一回着替えがあるんだけど、衣装はどちらもドレスだ。

髪も、ローラって役名に似合うよう、ブロンドのロングヘアのウィッグを用意するって言ってた。



本人に言ったら微妙な顔をされるはわかってるんだけど……塚田くんのローラ、めちゃくちゃ気になる!


だって、塚田くんだよ? もちろん騒ぎ立てたことはないけれど、普段一緒に居て、塚田くんのビジュアルが超一級のものだってことは理解してる。


そんな塚田くん扮する主人公・ローラ。

どんな出来なのか、緊張しながらも気になる……!



「もう、塚田くんってば。早く出てっ」


「うわっ」



宮城さんの声に押されて、パーテーションの向こうから転がるように出てきた影。


青いドレスの裾と、くるくるに巻かれた蜂蜜のような髪が、まるでワルツを踊るように揺れた。