危ナイ隣人

大きすぎる懸念が一つ。

それは、この劇の注目度だ。


塚田くんが主演(しかも女装)するとなれば、女子生徒が騒ぎ立てるのは必至。


その騒ぎに乗じて、講堂に行き着いてしまったりしたら……。



「ま、まぁ、大丈夫でしょ! 私達は当番の時間が違うから茜の舞台見に行く予定だけど……もしそれらしい人がうちのクラスに来たら、引き止めとくようにクラスの子に頼んどくしさっ」


「ありがと、今日に限っては2人とクラスが違ってよかったと思うよ……」



真帆とくるみのクラスの出し物は、駄菓子喫茶。

男女共に持ち寄った浴衣を着て、風情を忠実に生み出すんだって意気込んでたっけ



そんな風情にナオくんがかかってくれるとも思えないけど……どうか、どうか、バレませんように!





いよいよ、文化祭のスタート。


前半は真帆とくるみがクラスの当番なので、適当に時間を潰しつつ、スマホが震えるのを待つ。

10時を2分過ぎた頃に連絡が来て、正門の受付までお出迎えに行った。


久しぶりに会う本郷さんと、一度ちらっと会っただけだった美奈さんに挨拶して、ナオくんには再度制服の貸し出しをしているクラスを案内してから、また教室に戻ってきた。

3人は、美奈さんの従姉妹さんのクラスを訪れて、それから適当に回る予定らしい。


デートのお邪魔なのでは、と思ったけど、3人が3人共そういう認識がなさそうで、どうやら本当にみんなで文化祭を楽しみに来た様子だった。