そう言った塚田くんの横顔は、本当に疲れたといった様子。


たぶん、塚田くんから見た私も同じように映るんだろうけど。



「くじ引きで配役決めて、まさかこうなるとはね……」


「あの時、あの紙を引いた自分を心底呪いたい」


「塚田くん、よっぽど参ってるね」



まぁ、気持ちもわかる。ふかーく頷ける。

だって、よりにもよって塚田くん、主人公のローラ(女)を引き当ててしまったんだもん。


かわいそう、と思うじゃん? でも私も、人に同情してる余裕なんてない。

だって私も、もう1人のメイン、セティ(男)役になってしまったから。



私達のクラスが文化祭で披露する劇は、クラスの子が脚本を書いた完全オリジナルストーリー。

森の中でひっそり暮らしていたローラが、亡くなった母親が実は王女だったために王位継承者としてお城に連れて行かれ、彼女に仕えることになった騎士のセティと恋に落ちるというお話。


配られた脚本を読んだ時、素敵なお話だと思った。

同じクラスの子が、こんなにちゃんとした物語を考えられるのもすごいと思った。


……ただ、文化祭で披露するには難易度高くない!? って思ったのも事実。

世界観が創り込まれすぎてるんじゃないかって。


そんなことを考えていた矢先、配役が決まってしまったのだった。



「台詞を覚える暇があったら、単語の一つでも覚えられるのに……」


「わかる。私も何回も考えたよ、それ」