危ナイ隣人

私を抱きしめる力が、少しだけ弱められた。

何だかそれが悔しくて、今度は私が腕を回して力を込める。



「いつものナルシスト、どこいったの?」


「いつものって」


「私はナオくんがいいの。ナオくんだから、あんなに追いかけたんだよ」


「……そうだったな」



再び強い力で包まれて、私はそれに安堵する。

この温もりを私から手放すなんて、想像も出来ない。



「まだ緊張するけど……少しずつ慣れられるように、頑張るね」


「そうしてくれ。あんな風に距離とられて、傍にいるのに触れられもしないなんて、耐えらんねーからな」



吐息と同時に耳元で甘く掠れた声が響いて、目の前がチカチカする。


こういうことを言えちゃう辺りは、やっぱり経験の差だ。



「ど……努力します」



真っ赤になっているであろう顔を見られたくなくて、ナオくんの胸元に顔を埋める。

それからおでこをぐりぐり押し付けて呟くと、ナオくんは満足げに笑って抱擁を強めた。





火事の後、退院の報告と同時に、ナオくんとの交際が始まったことを真帆とくるみには伝えていた。

メッセージで伝えたんだけど、それはもう……それはもう本当に、とても喜んで祝福してくれた。

ずっと心配かけて見守ってくれていたから、2人にいい報告が出来たことは、私もすごく嬉しかった。


ナオくんも誰かに言ったの? って聞いたら、本郷さんを始め、同じ班の人全員に知られたって言ってた。

どうにも、あの火事の時、本来残っていた業務の融通を利かせてくれたらしく、署にナオくんが居ない経緯が本郷さん伝で知れ渡っちゃったんだって。