危ナイ隣人

ベランダの鍵がかかってるのを確認して、電気を消して、お風呂場のお湯がもう完全に抜けきってること、換気扇がついてることを確認して。

最後に、完全に着るタイミングを逃してしまっていたTシャツを着て、家を出た。


404号室を出ると、フロアの廊下にはお隣さんはもういなくて、替わりにドアストッパーで扉が少しだけ開けられていた。


9月の夜はまだ熱を持っていて、それでも肌を撫ぜる風は盛夏よりも格段に冷たい。



「…………」



心の中には危険信号が灯っていて、脳内には警告音がずっと鳴り響いている。


ここに踏み込むのは危険だ。

わかってるのに引き返さなかったのは、私の性格の可愛くないところだと思う。


大きく息を吸って、私はドアノブに手を掛けた。





「んなとこに突っ立って何してんだよ」



廊下に漏れた明かりを頼りに、お隣さんがいるであろう部屋の扉を開けた私は、入り口のところで思わず立ち尽くしてしまった。

そんな私を見て、お隣さんは眉を潜めた。


だけど多分、私も同じくらい険しい顔をしてるんだと思う。



「何ですか、この部屋」


「何って。リビング」