危ナイ隣人

「ご迷惑おかけしました……」


「ほんとだよ」



リビングの真ん中で、はーっと深いため息が吐かれて、私はもう何も言えない。


萎れた私を見て、お隣さんは面倒臭そうに頭を掻いた。



「フローリングが結構水吸っちまってたから、一応大家に報告したほうがいいと思うぞ」


「そうですよね……」



報告かぁ。時間的に明日になると思うけど、気が重いなぁ……。

よくしてくれてる大家さんにまで迷惑かけちゃう。


何より、大家さんからお父さんに伝わるに決まってる。

反対を押し切って一人暮らしを始めたのに、初っ端からこんな失態を犯したなんて知れたら何を言われることやら。



「じゃ、俺帰るから」


「はい。ほんとにありがとうございました」



玄関に向かって廊下に出たお隣さん。


その後を追って廊下に出ると、


──ミシッ……



「……え?」



何とも不穏な音が静かに響いた。


音を立てたと思われるお隣さんも、立ち止まって足元を見つめている。



「今の音って」


「……床だな」