危ナイ隣人

火元の階の火災扉を誰かが閉めてくれたんだろうけど、ここにまで到達するだなんて。



「早く行かなきゃ……っ」



ポケットに突っ込んでいたハンカチを鼻と口に当てて、姿勢を低くして階段を駆け降りる。



急がないと。

そう思うけど、屈みながらじゃ上手く走れない。


かと言って立ち上がるのも、煙が目に滲みそうで出来ない。



「……っ」



視界が悪い。

早く逃げなきゃ。


ここで私が倒れたら、あの女の子に深い傷を負わせちゃうかもしれない。

あの子のお母さんに罪悪感を抱かせてしまうかもしれない。


お父さんとお母さんにだって心配かけちゃう。


そんなの絶対、ダメだ。



ダメ、なのに──



「ッげほっ……」



押さえる力を緩めてしまったハンカチの隙間から、煙を吸い込んでしまう。

慌ててハンカチを押さえつけるけど、喉の奥の方が気持ち悪い。


でも、そんなこと言ってられない。

外に出ないと。



「……っ」



3階くらいまでは降りてきたのかな。


しばらく進んだのちに薄目を開いて辺りを見渡すと、空気はそこまで濁ってなかった。