危ナイ隣人

階段一体に響いてるんじゃないかってくらいの声量で泣き出してしまった女の子に、お母さんはとても困った様子。


スルーすることなんかできなくて、思わず声をかけてしまう。



「あの、大丈夫ですか?」


「えっ……あっ、ごめんなさい! こんな時に……!」


「いえ、そうじゃなくて! 何かお困りかなって……」



私の声かけに、女性は申し訳なさそうに眉を下げた。



「うさぎのぬいぐるみをお店に置いてきてしまったんです。単身赴任で海外にいる父親から貰ったものだから、この子、すごく大切にしてたんですけど……」


「ぱぱがくれたの〜〜〜!」


「大事なのはわかるけど、今は逃げなきゃいけないのよ! ここで無事じゃなかったら、パパにももう会えないのよ……!?」



お母さんは必死に女の子を説得しようとしているけど、まだ小学校にも上がっていないくらいの、5歳くらいの女の子は、この世の終わりを迎えたように泣いている。



……そうだよね。

この頃はお父さんとかお母さんとか、そういう身近な人が世界の全てだった。