危ナイ隣人

これ、と掲げられたのはやはりタオル。


塞いでた、とそこまで言われて、やっと状況を理解する。



ゴ……Gの突然の登場でテンパって、お風呂の蛇口を開いていたのを完全に忘れてしまっていた私は、浴槽のお湯を溢れさせてしまったのだ。


そこまでならまだ何とかなったんだけど……壁に掛けて乾かしていた体を洗う時に使うタオルを、どうやら落としてしまっていたらしい。


落としたのは多分お風呂洗いの時だと思うんだけど、私はそのことに気付かず、タオルは排水溝のところまで流されて──廊下までお湯が浸水する事態を引き起こしてしまったというわけだ。



「どっ、どうしよう! 下の階に浸水したりしたら……!」


「落ち着け。この部屋の下の階は今空き部屋だったはずだ」


「なっ、なんでそんなこと知ってんのよぉ〜!?」



パニック状態の私の声は、情けないけど半泣きで、やっぱり今どうでもいいことを口走る。


お隣さんはやっぱり怪訝そうに眉根を寄せて、それでも関係のないこの状況を投げ出そうとはしなかった。



「とりあえず、全部拭くしかねーだろ。このままじゃフローリングが水分吸って腐る」


「バスタオル持ってきますっ」