危ナイ隣人

これはもしかすると、さっきの無礼な言動を水に流してくれるなんてことがあるかも!?



「雑誌も一緒に捨てるぞ。ゴキブリ潰したやつ、どうせ読まねえだろ」


「読まないです。捨ててください」


「あとは……床か。そんだけ嫌いなら、気持ち悪ぃだろ。俺もう帰るけど、後は雑巾で拭いとけよ」


「わかりました」



なんだ、めっちゃいい人じゃん!

堅気の人間には手を出さねぇ、的な?

根は優しい人なのかな。って言うか、そうであれ!



「本当にありがとうございます、助かりました! 今度、何かお礼持って行きます」


「別にいいよそんなん。ゴキブリ殺しただけだし」


「でも……」


「マジでいーから──って、おい。なんか、変な音しねぇか?」



お隣さんの眉間に、再び深いシワが刻まれる。


変な音って? と私が首を傾げていると、



「……水の音。風呂場か」



家主である私に視線を送ることもなく、お隣さんは体を翻して再び廊下に出ようとする。


風呂場? 風呂場って──あっ!