危ナイ隣人

何気なく見てたニュースで、引退が報じられていた。


ニュースで取り上げられるってことは、有名な選手だったんだろうなぁ。



遺品整理はしてない。


お兄ちゃんが生きていた頃のまま、この部屋の時間は止まっている。



「色々漁るけど許してね、お兄ちゃん」



断ってから、勉強机の引き出しを開けた。


中には、プラスチックのペンケースとか、単語帳とか。



「真面目だな~」



かなり減った付箋なんかもある。


これは、妹として……というより、受験生として見習わなきゃいけないなぁ。



引き出しをどんどん開けていく。

全てに目を通すつもりで、小さなことでも見逃さないように。



今日ここに来た目的は、私の知らないお兄ちゃんの時間を知るためだ。


きっと沢山存在するその時間は、ナオくんに繋がるものもあるはずで。


聞いた話だけじゃなくて、自分で目で見て判断することが出来たら……私の本当の気持ちだってわかるんじゃないかって思ったの。



「こんなことでもないと、お兄ちゃんの部屋のものをじっくり見ることなんかなかったかもしれないな……」



いないことを突きつけられるような気がして、いつからか遠ざかっていたこの部屋。


お兄ちゃんの分まで強くなろうとして、いつまでも“妹”だった私を振り払おうとして。