危ナイ隣人

さすがにそこの分別はついてる。


でも、じゃあ、どうしたら?



「会いたいけど……いざ会った時、何を話したらいいかもわかんないし」



自分の兄の死を自分の責任だと思っている人に、なんて声をかければいいの?


洗濯物を干しながら、ぐるぐる考えを巡らせる。



“ナオくんは悪くないよ”?


“お父さんとお母さんと同じように、私も恨んでないよ”?



──本当に?


私、本当に恨んでない……?



京香さんから話を聞いて1ヶ月が経った。


この1ヶ月、毎日ナオくんのことを考えていた。



ナオくんは家族のことで心に傷を負っていた。

だから非行に走った。親のしがらみから抜け出せずにもがいていた。

それでも、お兄ちゃん達と出会って変わった。明るい未来を歩こうとした。


だけど断たれてしまった道。

ナオくんは苦しんで、今もずっと苦しんで、人を救うために毎日頑張っていて。



──だから私も、ナオくんの傍にいるために、お兄ちゃん達と同じように彼の全てを肯定するべきだって。



「ッ!」



背筋がゾクっとした。


夜の生温い風から逃れるように、ベランダの戸を閉める。