危ナイ隣人

圭太が直也との距離を詰め、右腕をそっと持ち上げた。



『っ何……すんだよバカ圭太』


『うるせ。ちゃんと冷やさねぇから、こんな面白いツラになるんだよバカ』


『面白い言うなアホ』



腫れ上がった頬に手を添えられて、すぐは憎まれ口を叩いて。

でも、その表情はすぐにくしゃりと歪められた。



『……ってーんだよ、コレ。まじで』


『うん』


『2学期の成績、学年2位だったんだ。それがどうしても気に食わなかったらしくて』



外部から見れば十分レベルの高い学校で、学年2位でいることが許されない。

そんな重圧が──昔からずっとだったなら?



『高校に入ってすぐ、思ったんだ。親の決めた学校に入って、親の機嫌損ねないためだけに勉強してさ。俺、なんでここにいるんだろうって……考えたらバカバカしくなってきて』


『だから……タバコ吸ったり、悪いやつらとつるんだりするようになったの……?』


『……小さな反抗のつもりだったんだ。あいつらが絶対に赦さないことをすれば、何かが変わると思った。楽になれると思った』



でも、と直也の言葉は続く。



『弱いんだよ俺。全部投げ出す覚悟なんか出来なかった』


『っなお、』


『あいつらが求める結果を棄てることも、俺には出来なかった……っ』



心底悔しそうに唇を噛んで、握られた拳には血管が浮かび上がってた。



側から見れば理解出来ない行動にも、直也なりの理由があって。

色んな葛藤があって。



喉の奥が熱くなった。


私が泣くのは違うって頭ではわかってたけど、堪えることが出来なかったの。