危ナイ隣人

直也の左頬が思わず目を見張るほど赤く腫れあがっていたのは、2学期の終業式の日だった。



式を終えて、教室までの廊下を並んで歩いていた私達に気付くなり、気まずそうに顔を逸らした直也。


だけど、圭太がそれを逃がすはずもなく。



『誰にやられた』



足早に距離を詰め、がっちりと直也の腕を掴んだ圭太。


いつもの調子だったらすぐに振り払おうとするのに、その時の直也は腕を持ち上げることもしなかった。



『別に……転んだだけだし』


『見え透いた嘘吐くな。また喧嘩したのか?』



“また”。

この頃には圭太とも私とも、親し気に話すようになってはいたけれど、一方で素行に関する悪い噂は絶えなかった。


サッカー部の後輩に、なんであんなやつと仲良くしてるんですかって聞かれたこともあった。

でも私は、所詮噂だし、って受け流した。

根拠のない噂を鵜呑みにするほどバカじゃないつもりだったし、それは圭太も同じはずだった。



『……どうだっていいだろ。圭太には関係ない』


『関係ないかもしれないけど、どうだっていいわけないだろ』



必死に突き放そうとする直也に、圭太の声は怒っていた。



辺りの喧騒がやけに耳につく。

周囲の視線を集めていることは、半歩外にいる私が一番感じていたと思う。