危ナイ隣人

でも……そうね。

あの頃の私はまだ直也の警戒心を捨て切れてなかったから、



『つ、付き合ってないわよ!』


『え、そうなん? じゃ、キョウカの片想い?』


『なっ……何言ってんのバカじゃないの!』



直也の方から来てくれなきゃ、今の私達はなかったかもしれないわ。



『っは、わかりやすっ』


『ちょっと、やめてよバカ直也!』



ナオ、とは呼べなかった。

ナオって呼んでるのは、私の知る限り、圭太一人だけだったから。


直也との間にあった隔たりをぶち破った圭太にのみ、そう呼ぶことが許されているような気がしたの。



『あれ、珍しい組み合わせだな』



ワーワー言い争う私達のもとに、呑気な声が届く。


首をぐりんと捻って声のする方を振り向くと、不本意なことにその動作が全くシンクロしていたらしく、圭太はおかしそうに笑った。



『何笑ってんだよ、圭太』


『いや? 珍しいけどおもしろい組み合わせだなぁと思って』


『はぁ? それ本気で言ってるの』


『当たり前だろ? 遠目に見た時、どこのキョウダイかと思ったもん』



その時は、圭太ってば何言ってんのって軽く笑い飛ばしたけど、今となっては直也のことを弟みたいに思ってんだから、不思議なもんよね。


その時は圭太に神経が向いていて、圭太の意識も完全に私に向いていた。

だから、気にもしなかったの。


この時のナオが、どんな表情を浮かべていたのかなんて。