危ナイ隣人

「変に気ィ遣ってんじゃねぇよバカ」



左のほっぺたがむにゅっと摘まれる。


ふいうちだったから、びっくりして思わず息を止めてしまった。


またブサイクなんて言葉が飛んでくるのかと思いきや、ナオくんはパッと指を離して、袋の中に入ったスポンジを手に取った。



「ほら、始めるぞ」


「あ……うん。ありがと」



名前の溝を歯ブラシで擦ったり、お花が入った入れ物を洗ったり。

青空の下で、私達は黙々と掃除に励んだ。



知らない人のお墓なのに、ナオくんが真剣に手伝ってくれたことにびっくりもしたけど、彼が一言も口を利かなかったから、私も何も言わなかった。


お墓っていう場所が、私達をそうさせたのかな。





「あっ」



お墓を磨き上げ、最後にナオくんには上から水を流してもらった。

私がやろうと思ったんだけど、背が足りなかったんだよね。


バケツの中の水を入れ替えて、水鉢の中に水を注いで。

花立にお花を入れたところで、失態に気付いた。



「マ、マッチ買ってくるの忘れた……!」



ここまで完璧だったのに、必要な物を使うために必要な物を忘れてしまっていた。


おろおろする私を見て、ナオくんが呆れたように息を吐く。



「ったくお前は……。しっかりしてんのかそうじゃないのか、よくわかんねぇな」


「う。返す言葉がない……」


「仕方ねぇなぁ。車にライターあるから、取ってきてやるよ」