危ナイ隣人

途中で水を汲んで、そのバケツはナオくんが持ってくれた。



「ここ、景色いいでしょ」


「あぁ。かなり山登ったもんな」


「おじいちゃんが亡くなった時に、おばあちゃんがここにしようって決めたんだって。今まで住んでた街を見渡せるから、寂しくないでしょって言って」



そう言ったおばあちゃんも、今はおじいちゃんと同じところにいる。

後から追いついてしまったお兄ちゃんと3人、ここで眠ってる。



「今年も来たよ、お兄ちゃん」



ある灰色の墓石の前で立ち止まり、向かい合った。


そこにはうちの名前が刻まれていて、側面には祖父母の並びに、お兄ちゃんの名前が刻まれている。



「…………」


「へへ。掃除するね」



持ってきた大きめの鞄の中から、スポンジや歯ブラシを取り出す。

これらは全部、昨日、100円ショップで買い揃えた物たちだ。


あと、ろうそくと、束になったお線香も買った。


いつもはお母さんが用意してくれてたから何がいるのかわかんなくて、記憶を頼りに頑張って揃えてみたんだけど……足りない物、ありませんように。



「バケツ、ありがと。今から掃除するから、適当に待ってて」


「は?」



ナオくんの手からバケツを奪い取ると、彼は眉間に皺を寄せた。



「ここまで来てそれはねーだろ。俺にもスポンジ寄越せ」


「え……でも」



そこまでさせるわけには。


それに、ナオくん疲れてるのに。