危ナイ隣人

いつものメッセージの文面みたいに、必要なことだけを端的に話して、ナオくんは慌ただしく出て行ってしまった。



あまりに一瞬の出来事で、何が起こったのかぜんぜん把握できない。


呆気にとられているうちに、遥か遠いところでサイレンの音が聞こえた気がした。



「トランシーバーとかかなと思ったけど……これだったのかな」



立ち上がって、ナオくんを連れてった声の正体らしきものを見つける。


リビングの扉正面にある棚に、ブルーレイとかDVDを再生するデッキのような形をした機械があった。

デッキより随分小さいけど。



──『工場で大規模火災発生』

機械越しの声が、何度も頭の中をループする。



私は、非番の日のナオくんしか知らない。

いつも気怠げで、フラッと消えたと思ったらベランダでタバコを吸ってて、土日は競馬をして負けてばっかりで、淹れるコーヒーはブラックで、飲めない私をバカにして、高校生の私と同じテンションで会話をして。


だけど、ナオくんは大人で、私と違って働いていて、消防士っていう立派な仕事に就いている。

人の命を救うために、危険な現場に身を投じているんだ。


そういう世界にいる人だってこと、ちゃんと知ってたはずなのに……わかってなかった。



「……消防士って、大変なんだな」



テーブルに広げていた教科書やワークを閉じて、かき集める。


ナオくんが入れてくれていたエアコンや電気を消して、私は403号室を出た。