危ナイ隣人

うーん?

高校時代の話は、あんまりしたくない様子。


前に話題に上がった時も、うまくかわされたし……何か、嫌なことでもあるのかな。

もしかして、黒歴史ってヤツ?



「もう一回、この問題の解き方教えてよ」


「やだよ。一回しか言わねえって言ったじゃん」


「いやいや、聞いてないよ。何平気で嘘ついてんの」



私の知らないナオくんのこと、気になるけど聞けない。


ナオくんが話したがらないってことは、ただの隣人である私が踏み込んでいいラインじゃないってことなんだと思うから。



「そんなに教えてほしいか?」


「嫌な予感」


「ナオくん超イケメンって言ったら教えてやってもいいぞ」


「うわー、そうやって言わせるあたりがかっこよくない」



この微妙な距離感をもどかしいと感じてしまうのは、私のワガママなのかな。



「大体ね、そういうのは──」



──ザザッ……


私の声を遮るようにして、どこからか聞こえたノイズ音。


その出所を見つけるよりも先に、私達以外の声が部屋の中に響いた。



『消防本部より指令。──市港区の工場で大規模火災発生。音坂消防署、第3出動』



機械越しの声が言葉を切るよりも早く、ナオくんは立ち上がっていた。


呆気にとられる私をよそに隣の部屋に駆け込んで、再び戻ってきた時には既にダウンを着ていた。

普段の気怠げな顔じゃなく、いつか見たことのあるような真剣な顔をしている。



「召集かかったから、行ってくる。好きなだけいていいから」