危ナイ隣人

「ふーん。高2の数学っつったら、微分積分とか複素数平面とか?」


「微分積分はあってるけど……フクソスウヘイメンって、何?」



小難しそうな単語が出てきたことに驚いて、かつそれがナオくんの方からだったことに余計驚いて、左側を見上げた。


隣の彼は、カップに口をつけたまま、首を捻っている。



「あー……あれは3年の内容か。3億光年も昔のことだから、よく覚えてねぇや」


「3億光年も前からナオくんが存在してたら堪ったもんじゃないよ」


「今頃人類の宝だって崇められててもおかしくないだろ」



マグを持つのとは反対の手で、軽いチョップがお見舞いされた。


暴力反対! 頭を両手で押さえて反抗するも、本人はどこ吹く風。解せない。



「人類の宝とか言うならさぁ。私がつまづいてた激ムズ問題、解いてよ」



我ながらどんな理屈だ、と思いつつ。

テーブルの上で開いているワークブックの発展問題を指さした。


ついでに、解答を書き込んでいる青色のノートも見せる。

数学ってなんか青ってイメージがあるから、中学生の頃から、数学のノートはずっと青色なんだ。


ナオくんは黙ったまま、静かにこの難問を見下ろした。



くるみや近藤に教えながら頑張って向き合ったけど、遂に答えが導き出せなかった問題だもん。

ナオくんに解けっこない。


ワークブックを見せておきながらなんだけど、一瞥だけしてなんのリアクションも返ってこないんじゃないかなぁ。