危ナイ隣人

平日の微妙に早い時間だからか、お店の中は比較的空いていた。





「ねぇ、1つワガママ言ってもいい?」



ヘラで作った土手の中で生地がふつふつと沸き立つ様子を眺めながら、ぽつりと言ってみる。

何でもないことのように言ったのは、何でもないことのように言わなきゃ口にさえ出来ないような気がしたからだ。


それがわかっているからか、ナオくんは茶化したりせず、静かに聞き返してくれる。



「俺が聞ける範囲ならな」


「どこまでが聞ける範囲なの?」


「そうだなー。ブランドもんの鞄までなら可」


「やめなよ、そういう無茶はいつか自分を滅ぼすよ」


「ははっ。JKに冷静に諭されるようじゃ、俺ももう終わりだな」



20代前半が何を。


私から見たらそりゃオッサンだけど、世間一般から見たらまだまだ若いんでしょ。

これから脂が乗ってくるんじゃないの。知らないけど。



「冗談は置いといて。ワガママってなんだよ、言ってみろよ。オッサンが聞いてやるぞ」


「あ。オッサンって思ってたのバレてた?」


「バレバレだ。顔に書いてあった」



それは失礼しました。


顔をうにーって伸ばして、表情をリセットする。

その様子を見ていたナオくんに、ちょっと笑われた。



「あのね、今度テストがあるの」


「へぇ。定期試験?」


「ううん、実力テスト。成績に関係ないから、あんまりやる気出なくて」