「そういえば……今のオトコは同僚って言ってたな」


「私が先に出世しようとしただけで、まさかそんなこと言うつまらないヤツだなんて思わなかった! 心底失望したわ!」


「それで浮気とか、ひどいですね」


「でしょう!? あぁ、やっぱり茜ちゃんは癒しだわぁ」



一度解放された体が、再び京香さんの腕に包まれる。


と、その様子を横目にナオくんが薄紫色の缶を呷った。



「わかってたんじゃねーの、ソイツ。京香が本気で自分のこと好きじゃないって」



真っ赤な顔してぼんやりとしか開いてない目で……何言ってんだこの人?



「相当酔っ払ってるみたいですね、ナオくん。ほっときましょ……って、京香さん?」



ギュッと、私を抱き締める腕に力が込められる。


身動きが取れなくて顔だけ見上げると、京香さんは表情を歪めて、少し、苦しそうな顔をしていた。


けど、それも束の間。べーっと、ナオくんに向かって舌を出す京香さん。



「んなワケないでしょ、バーカ! 会うたびに愛してるって言ってたわよ!」


「うわっ、お前のそんなん聞きたくねぇ!」


「何をーっ!」



2人の大人と過ごす時間は楽しかった。


序盤とは違ってナオくんはリラックスしているようで、私も変に気を遣わなくて。

京香さんは、事あるごとに私を抱き締めて可愛がってくれた。これは、お酒が入ってるからなのかなぁ。



誰かがふざけて、誰かがツッコんで、誰もが笑って。

終始、笑いの絶えない時間だったと思う。