危ナイ隣人

「あーあ。結局こうなるんだよな……」


「ちょっと直也……。あんたまさか、こんな若い子にまで手ェ出して、」


「出してねぇ、ただのオトナリサンだ。つーか、俺の好みはよく知ってるんじゃねぇのか──京香(きょうか)



京香と呼ばれたその人にまた視線を向けられて、私は弾かれたように四肢の動かし方を思い出し、慌てて頭を下げる。


俺の好みがどうとか、言外に貶された気はするけど……ここはもう気にしないでおこう。うん。



「隣の404号室に住んでる御山茜です。あの、決して真木さんとはそういう関係では──」



空気が動く気配がして顔を上げると、京香さんは大きな目を更に大きく見開いて私を見ていた。


赤い紅が引かれた彼女の口が開こうとするのを、先回りしたナオくんが手で制す。



「話なら外で聞く。お望みどおり飲みながら、なんなら朝まで付き合ってやるから」


「ナオくんお酒弱いのに?」


「あぁそうだった……って、おい。今はそういう話じゃねぇだろ」



横槍を入れた私に、ナオくんは力が抜けるようにガクッと肩を落とした。


緊張しすぎて、思わずふざけちゃったよ。ゴメン、ナオくん。


心の中で詫びを入れた瞬間、ガラスが軽快にぶつかり合うような笑い声がリビングに響いた。

見ると、ナオくんの肩の向こうで、綺麗な顔がしわくちゃになっている。



「あははっ、面白い子だね茜ちゃん! 気に入った!」


「気に入ったって……悪い笑い方で悪党が言うセリフだぞ、それ」


「この私を悪党呼ばわりするなら、せめて懸賞金は高く設定しなさいよ?」


「そういう問題かよ」