危ナイ隣人

「ちょっと。笑顔がブサイクだって言うワケ?」



そりゃ、あんたの好みじゃないだろうけどさ!


ムッとした私のおでこを、ナオくんの指が軽く跳ねた。



「バーカ。ただの隣人のオッサン相手に、ヘタクソな作り笑顔向けんなっつってんだ」


「え……」


「甘える必要はねーけど、せめて素でいろよ。最初に言ったろ」



“ただの隣人のオッサン”は、ニヤッと笑ってからまたリビングに戻っていった。


弾かれたおでこに手を当てて、反対の手をその大きな背中に伸ばす。

それから──



「ぐえっ!?」



ナオくんの変なキャラクターパーカーのフードを引っ張ってやった。


低いところから引かれて、ナオくんはびっくりしたように体を翻す。



「殺す気か!」


「大袈裟だよ。ちゃんと手加減したじゃん」


「嘘つけ、三途の川の向こうでじいさんが手振ってたぞ」


「あらあら。無事に帰ってきてくれてよかったよ」



パーカーから手を離して、にっこり笑いかけてやる。



「女子高生にブサイクは禁句だってこと、ちゃんと覚えててね?」


「まじかよ。最近のJKこっえーな……」



怖いもなにも。

年頃の女の子にブサイクなんて暴言吐いた罪は重いんだから。



ナオくんの横を通り過ぎて、リビングに戻る。


2、3歩出たところで、少しだけ振り返った。



「……ありがとね」



気恥ずかしくて、顔は見れなかった。