危ナイ隣人

「それで? 今日はどうしたの?」


『あぁ、もうすぐクリスマスだろう。今から用意するんじゃ25日を過ぎると思うけど、プレゼントの希望を聞いておこうと思って』



なるほど、出勤前の忙しいはずの時間帯に電話してきたのはそれが理由か。


自分の中で合点がいって、電話越しに見えてないことはわかっていながらも口角を上げる。



「何にもいらないよ? 一人暮らし始める時に、十分色んなもの買ってもらったし」


『何言ってるんだ。それとこれとは話が別だ』


「でも、一人暮らししたいって無理聞いてもらったしさ。あの時色んなもの揃えてくれたから、今ほんとに欲しいものないんだよね」



服はあればあるほど楽しめるし、最低限のコスメもほしい。

学校で使ってるペンケースにもそろそろ飽きてきたし、なんなら消しゴムももう小さい。


欲しいものなんて、挙げてしまえばキリがない。



「代わりに、お母さんとディナーでも行ってきてよ。クリスマスに外国のレストランなんて最高じゃん!」



お母さん喜ぶと思うよ、と付け加える。


お父さんは少しの沈黙のあと、静かに私の名前を呼んだ。



『遠慮してるならそんなものは必要ないぞ』


「何言ってんの。親相手に遠慮なんかしてないって」


『だが……』


「ほんとに大丈夫だから! クリスマス当日は、買ってもらったオーブンレンジでケーキでも焼くよ」