危ナイ隣人

「まぁまぁ遠慮すんなって。そうだな、胸囲から──」


「やだ、まじで聞きたくないっ!」



何が悲しくて成人男性のスリーサイズなんか聞かなきゃなんないのよ!

耳を塞いで音を遮断する私を見て、ナオくんはおかしそうに笑っている。


ついでに、ナオくんが着るトレーナーにプリントされたキャラクターも、妙に腹立つ顔で私を見てる。

やめてほしい。なんでそんなトレーナー持ってんの。



と、ここでズボンの後ろポケットに突っ込んでいたスマホが震えた。


ナイスタイミング! とスマホを手に取ると、お父さんからの着信だった。



「どーぞ」



断りを入れる前にナオくんがそう言ってくれたので、通話ボタンを押しつつリビングを出る。



「もしもし」


『もしもし、俺だ。元気か?』


「元気だよ。ってか、3日前にもこの会話したじゃん」


『そうだったかな』



電話の向こうで笑うお父さんに、私も笑い返す。


元々過保護なうちの親。

向こうでのお父さんの仕事が少し落ち着いたみたいで、最近はよく電話がかかってくる。


年末年始も日本に帰ってこれないみたいだから、お父さん達なりに気にしてるんだと思う。

私は全然平気なんだけどなぁ。



「こっちは20時だから……そっちはまだ朝の7時か。ってことは、今から仕事?」


『あぁ。もうすぐ家を出るよ』


「相変わらず朝早いね」



お父さんが働く国では、始業時間が日本よりも随分早いらしい。

初めは慣れないで苦労したみたいだけど、慣れたら日本で働くよりも自分に合ってるってこの前言ってた。