だけど、別段驚いた様子もなく、涼しげな表情は変わらない。



「うん、大丈夫みたい。私も今戻ろうと思ってたとこ」


「そ? ならいいけど」



戻ろう、と廊下に出てきた塚田くんの背中を軽く押す。


と、背後で「あーあ」と声が上がった。



「彼氏持ちかぁ。そりゃそうだよなぁ、キラッキラのJKだもんなぁ若いなぁ」


「中川さん一気にオッサン臭いですよ」


「っていうか、彼氏さんかっこいいねー。あんな子がクラスにいたら絶対好きになっちゃうわ〜」


「おっと美奈さん、浮気ですか?」



あらら、あらぬ誤解を与えちゃった。

まぁ……わからなくもない。

この時間に家から同世代の異性が出てきたら、そういうふうに取られてもおかしくないよね。


そんなんじゃないんだけどなーと思いつつ、もう関わることなんてないだろうし、一々弁解するのも面倒だから放っておこっと。


幸い、塚田くんも気にしてなさそうだ。



塚田くんが先に玄関に入って、私はもう一度だけ振り返って、本郷さん達に視線を向ける。


ぺこっと軽く頭を下げて、再び顔を上げたとき──ぐったりしていたナオくんの視線が、私の瞳に飛び込んできた。



「……っ」



弾かれるように玄関に飛び込んで、勢いのまま鍵までかける。