危ナイ隣人

「昨日引っ越してきた御山です。挨拶が遅くなってしまってすみません」


「……ミヤマ?」



お隣さんが少し目を見開いて、私の顔をじっと見た。


……背、高いな。何センチあるんだろう。

152cmしかない私は、どうも見上げる形になる。


っていうか、この人……完全に固まっちゃってない?



「あの。私の顔に、何かついてます?」


「え? あ、いや」



あまりに何も言わないので思わず声をかけると、お隣さんはハッとしたように私から目を逸らした。

まるで、氷の魔法が解けたみたいに。



「……真木(まき)だ」



少しの間を置いて、お隣さんが言った。クラスの男子達よりも、ちょっと低い声。

なんか、オトナの男の人って感じ。


……あ。よく見ると左目の下にホクロがある。

ちゃんと見ると、俳優の佐●健に似てるし。これは女子に人気ありそうだなー。



「んじゃ、俺コンビニ行くから」


「あ、そうですよね。引き留めてしまってすみませんでした。これからよろしくお願いします」


「こちらこそね。ご丁寧にどーも」



私の声を背中で聞いて、手をひらひらとふる隣人──真木さん。


瞬間、びゅうっと風が吹いて──



「あ……この匂い」



昨日、遠い記憶を引っ掻かれた、どこか懐かしい香りが鼻をかすめた。

鼻を抜けるような、ミントみたいな香り。