その後、ひとまず露店を一通り流し見たカヤ達は、ナツナの提案でまた井戸に戻ってきた。
「はあ……凄い人だったね」
「本当ですねえ」
久しぶりの人口密度が低い場所に、息を撫で下ろす。
するとなぜか隣でキョロキョロしていたカヤが「あ、居た居た」と声を漏らした。
釣られてその視線の先を見ると、そこには柔らかく波打つ黒髪を持つ少女の後ろ姿が。
「……あれ?」
小さな背中は、何やらコソコソと建物の影に隠れているように見える。
その挙動にカヤが小首を傾げていると「行きましょう」と言う声と共にナツナに手を握られた。
戸惑うカヤを引っ張りユタの元へ向かったナツナは、その肩を後ろから叩いた。
「ユータちゃん」
「きゃっ!?」
驚いたような顔で振り返ったユタは、ナツナを見据え、それからカヤを見た瞬間、思い切り顔を反らした。
なぜかその顔は赤い。
「探したんですよー。ここに居たのですね」
「あ……う……」
語り掛けるナツナに、ユタは口を開いては閉じてを繰り返す。
ふと、その掌の中に二つの小さな袋がある事に気が付いた。
何やら大事に大事に握りしめられている。
もしや露店で何かを買ったのだろうか。
「それ何?何か買ったの?」
カヤが尋ねる、ユタは肩をビクッと揺らして更に深く俯いてしまった。
(……聞いちゃ駄目だったのかな)
あまりにも、まごついているその様子にカヤも言葉に詰まる。
そんな二人の様子を見たナツナが、朗らかに口を開いた。
「これはタケル様への贈り物なんですよねー、ユタちゃん」
その瞬間、ユタの顔が先ほどの果実並みに赤くなった。
「ナ、ナツナ……!?何をそんなサラッと言ってるのよ!」
「あ、ごめんなさいー。口が滑っちゃいましたあ」
「嘘付きなさい!わざとでしょう!絶対わざとでしょう!」
涙目でナツナをぽかぽか叩くユタ。
一体何が何やら分からないカヤに、ナツナがニッコリと笑って、建物の向こう側を指さした。
カヤがこっそりと建物の影から顔を出すと、そこには人ごみから頭一つ分突き出たタケルの姿があった。
それを見た瞬間、ユタが先ほどこそこそ隠れて誰を見ていたのかやっと理解した。
「ユタ、もしかして……タケル様の事……もがっ」
「きゃー!言わないで!それ以上言わないで!」
思いっきりユタに口を塞がれた。
目の前の可憐な少女は、まん丸の眼を潤ませて心底恥ずかしそうに唇を噛んでいる。
その表情が決め手となった。
(ユタが『あの』タケル様を……?)
とんでもない衝撃を受けたカヤは、ナツナがユタの手をカヤからそっと退かした事にも気が付かなかった。
「……えっと……じゃあ、タケル様の事だったの?私にぶつかってきたのも、『あの方のお傍に居れるなんて狡い』なんて言ったのも、全部?」
にわかに信じがたい事実に、しつこくそう尋ねる。
ナツナが「ユタちゃんってば、そんな意地悪しちゃ駄目なのですよ」と咎める声すら聞こえなかった。
「はあ……凄い人だったね」
「本当ですねえ」
久しぶりの人口密度が低い場所に、息を撫で下ろす。
するとなぜか隣でキョロキョロしていたカヤが「あ、居た居た」と声を漏らした。
釣られてその視線の先を見ると、そこには柔らかく波打つ黒髪を持つ少女の後ろ姿が。
「……あれ?」
小さな背中は、何やらコソコソと建物の影に隠れているように見える。
その挙動にカヤが小首を傾げていると「行きましょう」と言う声と共にナツナに手を握られた。
戸惑うカヤを引っ張りユタの元へ向かったナツナは、その肩を後ろから叩いた。
「ユータちゃん」
「きゃっ!?」
驚いたような顔で振り返ったユタは、ナツナを見据え、それからカヤを見た瞬間、思い切り顔を反らした。
なぜかその顔は赤い。
「探したんですよー。ここに居たのですね」
「あ……う……」
語り掛けるナツナに、ユタは口を開いては閉じてを繰り返す。
ふと、その掌の中に二つの小さな袋がある事に気が付いた。
何やら大事に大事に握りしめられている。
もしや露店で何かを買ったのだろうか。
「それ何?何か買ったの?」
カヤが尋ねる、ユタは肩をビクッと揺らして更に深く俯いてしまった。
(……聞いちゃ駄目だったのかな)
あまりにも、まごついているその様子にカヤも言葉に詰まる。
そんな二人の様子を見たナツナが、朗らかに口を開いた。
「これはタケル様への贈り物なんですよねー、ユタちゃん」
その瞬間、ユタの顔が先ほどの果実並みに赤くなった。
「ナ、ナツナ……!?何をそんなサラッと言ってるのよ!」
「あ、ごめんなさいー。口が滑っちゃいましたあ」
「嘘付きなさい!わざとでしょう!絶対わざとでしょう!」
涙目でナツナをぽかぽか叩くユタ。
一体何が何やら分からないカヤに、ナツナがニッコリと笑って、建物の向こう側を指さした。
カヤがこっそりと建物の影から顔を出すと、そこには人ごみから頭一つ分突き出たタケルの姿があった。
それを見た瞬間、ユタが先ほどこそこそ隠れて誰を見ていたのかやっと理解した。
「ユタ、もしかして……タケル様の事……もがっ」
「きゃー!言わないで!それ以上言わないで!」
思いっきりユタに口を塞がれた。
目の前の可憐な少女は、まん丸の眼を潤ませて心底恥ずかしそうに唇を噛んでいる。
その表情が決め手となった。
(ユタが『あの』タケル様を……?)
とんでもない衝撃を受けたカヤは、ナツナがユタの手をカヤからそっと退かした事にも気が付かなかった。
「……えっと……じゃあ、タケル様の事だったの?私にぶつかってきたのも、『あの方のお傍に居れるなんて狡い』なんて言ったのも、全部?」
にわかに信じがたい事実に、しつこくそう尋ねる。
ナツナが「ユタちゃんってば、そんな意地悪しちゃ駄目なのですよ」と咎める声すら聞こえなかった。
