そして磨き終えた器を2人で運びながらカヤが今日の出来事を話すと、ナツナは可笑しそうに笑った。
「そういう事だったのですね。2人がお友達になったみたいで良かったのですよー」
「友達にはなってないと思うんだけどね……でも、なんていうかちょっと羨しかったな、あの子の性格」
台所へ向かう廊下を歩きながら、カヤは今日のユタの姿を思い出した。
あんなにも思い切り泣いて、あんなにも頬を染めて。
良い意味でも悪い意味でも感情を曝け出せるあのユタのようには、きっと自分はなれない。
「一生懸命なのですよ、ユタちゃんは。とっても可愛いのです」
優しい調子でそう言ったナツナに、カヤは「そうだね」と頷いた。
台所へ着くと、二人に気が付いたらしきクシニナが鍋を混ぜる手を止めて近づいてきた。
「おー。あの量を全部終わらせたのかい?」
「はいー」
ナツナが頷くと、クシニナは幾つか器を手に取ってしげしげと眺めた。
その様子を緊張しながら見つめる。
やがて、確認し終えたクシニナはニッと笑ってカヤ達に手を伸ばしてきた。
「よく頑張ってくれたね、ありがとう!偉い偉い!」
ぐしゃぐしゃ、と豪快な手つきで頭を撫でられる。
その手は水仕事のせいか少しカサカサしていて、けれどとても温かくて、大きい。
「えへへー」
嬉しそうに笑うナツナの隣で、カヤはユタよろしく固まった。
クシニナはたっぷり二人の頭を撫でた後、
「よし、んじゃお疲れさま。今日はゆっくり休みな」
そう言って手を放した。
唐突に頭の上の温もりが去っていく。
「はい、お休みなさいですー」
ナツナがそう言うと、クシニナはまた鍋をかき混ぜに戻って行った。
「いっぱい褒めてもらっちゃいましたねー」
「う、うん」
口籠るカヤの様子に気が付いたナツナが「どうしたのですか?」と尋ねてくる。
「なんでもないよ。あ、そういえば私、そろそろ翠様のお部屋に戻らなくちゃ」
慌てて答えると、ナツナはしばし心配そうにカヤを見つめたが、すぐにニコリと笑みを見せた。
「分かりました。では、また明日」
「うん、またね」
それ以上何も追及してこなかったナツナに感謝を感じながら、カヤは翠の部屋へ足早に戻った。
歩きながら、カヤはそっと頭に触れた。
先ほどクシニナに撫でられた感触が、まだ残留していた。
あんな風に、大人の人に無条件に褒められたのなんて、かか様以来だ。
じわりと沸き上がる照れくささに、カヤは頬を緩めた。
傍から見たら怪しいであろう表情をしながら翠の部屋に辿りついたカヤは、入口の布を退かして中に入った。
部屋の中は灯りが付いておらず、深い紺色に染まっている。
「翠ー?居るの……?」
眼を凝らしながらそう声を掛けたカヤは、はたと口を紡いだ。
翠が、机の上で腕を枕にして眠っているのが見えたのだ。
「そういう事だったのですね。2人がお友達になったみたいで良かったのですよー」
「友達にはなってないと思うんだけどね……でも、なんていうかちょっと羨しかったな、あの子の性格」
台所へ向かう廊下を歩きながら、カヤは今日のユタの姿を思い出した。
あんなにも思い切り泣いて、あんなにも頬を染めて。
良い意味でも悪い意味でも感情を曝け出せるあのユタのようには、きっと自分はなれない。
「一生懸命なのですよ、ユタちゃんは。とっても可愛いのです」
優しい調子でそう言ったナツナに、カヤは「そうだね」と頷いた。
台所へ着くと、二人に気が付いたらしきクシニナが鍋を混ぜる手を止めて近づいてきた。
「おー。あの量を全部終わらせたのかい?」
「はいー」
ナツナが頷くと、クシニナは幾つか器を手に取ってしげしげと眺めた。
その様子を緊張しながら見つめる。
やがて、確認し終えたクシニナはニッと笑ってカヤ達に手を伸ばしてきた。
「よく頑張ってくれたね、ありがとう!偉い偉い!」
ぐしゃぐしゃ、と豪快な手つきで頭を撫でられる。
その手は水仕事のせいか少しカサカサしていて、けれどとても温かくて、大きい。
「えへへー」
嬉しそうに笑うナツナの隣で、カヤはユタよろしく固まった。
クシニナはたっぷり二人の頭を撫でた後、
「よし、んじゃお疲れさま。今日はゆっくり休みな」
そう言って手を放した。
唐突に頭の上の温もりが去っていく。
「はい、お休みなさいですー」
ナツナがそう言うと、クシニナはまた鍋をかき混ぜに戻って行った。
「いっぱい褒めてもらっちゃいましたねー」
「う、うん」
口籠るカヤの様子に気が付いたナツナが「どうしたのですか?」と尋ねてくる。
「なんでもないよ。あ、そういえば私、そろそろ翠様のお部屋に戻らなくちゃ」
慌てて答えると、ナツナはしばし心配そうにカヤを見つめたが、すぐにニコリと笑みを見せた。
「分かりました。では、また明日」
「うん、またね」
それ以上何も追及してこなかったナツナに感謝を感じながら、カヤは翠の部屋へ足早に戻った。
歩きながら、カヤはそっと頭に触れた。
先ほどクシニナに撫でられた感触が、まだ残留していた。
あんな風に、大人の人に無条件に褒められたのなんて、かか様以来だ。
じわりと沸き上がる照れくささに、カヤは頬を緩めた。
傍から見たら怪しいであろう表情をしながら翠の部屋に辿りついたカヤは、入口の布を退かして中に入った。
部屋の中は灯りが付いておらず、深い紺色に染まっている。
「翠ー?居るの……?」
眼を凝らしながらそう声を掛けたカヤは、はたと口を紡いだ。
翠が、机の上で腕を枕にして眠っているのが見えたのだ。
