【完】絶えうるなら、琥珀の隙間

どうやらミナトは、自分の足で歩ける程度には元気らしい。

それが分かり、どっと安心した。

それと同時に外の様子が気に掛かり、カヤはミナトに向かって叫んだ。

「ねえ、ミナト!他の皆は!?」

「全員なんとか無事だ!翠様も怪我は無い!お前は大丈夫なのか!」

「私と蒼月は無事だけど、ハヤセミがっ……」

「兄様がそこに居るのか!?」

ミナト側から、素っ頓狂な声が返ってきた。


「うん、足を挟まれてて動けないみたいで……」

ハヤセミを振り返りながらそう言ったカヤは、ピタリと口を閉じた。

ミナトの松明の炎が入り込んだおかげで、ようやく辺りが良く見えたのだ。

そして今更ながらに現状を目の当たりにしたカヤは、驚愕した。


「嘘っ……水が……」

いつの間にか足元の水位は上がり、ハヤセミは顎下にまで迫っていたのだ。

彼は地面に肘を付いて顔を持ち上げていたが、このまま水位が上昇すれば、ハヤセミの口も鼻も塞いでしまうだろう。


「琥珀っ?水がどうしたのか!」

ミナトが叫んだ時、ガラガラッ……と背後で石が崩れ落ちる音が聞こえた。

振り返れば、天井付近からそれなりの大きさの岩が転がり落ち、ハヤセミの真横に、ボチャンッと音を立てて落下した所だった。

まずい。崩れ始めている―――――


「おい、ミズノエッ!」

カヤが恐怖に駆られていると、不意にハヤセミが叫んだ。


「兄上っ……?」

ミナトが壁の向こう側で息を呑んだのが聞こえた。

一体この状況で何を言うつもりなのか。

身構えたカヤだったが、次にハヤセミから発せられた言葉は、意外なものだった。

「この女を連れてさっさと逃げろ!急がないとこの空間も崩れる!」

予想外の言葉に、カヤもミナトも一瞬黙り込んだ。

「一人が無理そうなら、翠様でも誰でも良いから呼んで来い!この女のためなら、死ぬ気で協力するだろう!早く行け!」

「は、はい!」

ハヤセミの声に背中を押されるようにして、ミナトが何処かへ走っていく音が聞こえた。


再び二人きりになった空間の中、カヤは今度こそ何が何だか分からず、目を丸くしながらハヤセミを見つめるしか無かった。

一体何が起きたのか理解出来なかった。

自分が溺れそうになっているにも関わらず、よもやカヤの事を助けるような発言したように聞こえてしまったのだ。


「……何のつもり?」

カヤは問うた。

ハヤセミは、また何も言わなかった。